2004年11月16日
深刻化するオレオレ詐欺への有効な対策を検討するため与党内にオレオレ詐欺対策プロジェクトチームが自民5名、公明3名で発足した。私も自民党側メンバーの一人として指名され、対策立案を行うことになった。 オレオレ詐欺の被害額は先月1ヶ月だけで100億円を超えるなど、大変深刻な事態となっている。また詐欺の手口も非常に巧妙化しており、息子の振りをする人物だけでなく、警察官役や弁護士役まで登場して、巧みな演技を行うため、かなり慎重な人でも被害に合うケースが増えている。警察や自治体でもオレオレ詐欺対策講習会を開くなど対策が行われてはいるが効果は出ていない。
オレオレ詐欺には二つの道具が使われる。ひとつは振込み用の銀行口座であり、もうひとつは連絡用の携帯電話である。口座名義や携帯番号が分かっているのだから犯人特定は容易なはずだが、実際にはそうではない。銀行口座に関しては本人確認法という法律があり、開設時の本人確認は大変厳格に行われてはいるが、犯人グループは多重債務者などを使って口座を開設させ、その口座を数回転売、譲渡して名義人とまったく関係の無い者が口座を保有し、犯行に利用している。携帯電話は本人確認が厳格に行われているとはいえないプリペイド式携帯電話を使っているため、番号から本人確認が行えない場合が多い。また本人確認が行われている携帯電話でも、銀行口座と同じく転売、譲渡を行って足がつかないようにしているケースもある。
プロジェクトチームではまず銀行口座について検討を行い、その結果既存の「本人確認法」を改正し、他人になりすまして預貯金の入出金をするために通帳やカードを譲り受ける行為、相手が他人になりすまそうとしていることを知りながら通帳などを譲り渡す行為、正当な理由なく通帳などを売買する行為を禁じ、違反者に50万円以下の罰金を科すことにした。またこれらをビジネスとして行った場合には2年以下の懲役か300万円以下の罰金、または両方を科すことにした。さらにこうした行為を広告などで勧誘する行為も50万円以下の罰金とした。この改正案は与党の議員立法として先週国会に提出した。この法律が成立するとオレオレ詐欺犯行グループは、振込み用の口座を入手することが困難になり、犯行防止に大きな効果が期待できる。被害が拡大している現状に鑑み、今国会での成立を目指していきたい。
プリペイド式携帯電話については販売禁止を求める意見もあるが、仕事や子供の携帯料金管理目的等で正当に活用している人も多く、販売を禁止することには少々無理があると考える。現実的解決策として、プリペイド式携帯電話販売時の本人確認を義務付け、転売、譲渡の禁止等の内容を盛り込んだ新法を議員立法で制定する方向で検討が進んでいる。この新法については早急に内容を取りまとめ、銀行口座の本人確認法改正案と同じく今国会での成立を目指していく。
2004年09月28日
前々回の本欄にも書かせてもらったが、埼玉8区の補欠選挙をきっかけに、安倍晋三幹事長が進める党改革検証・推進委員会の「政治とカネのあり方」部会長に任命され、党改革のもっとも難しい分野を担当することになった。6月2日には党改革の中間提言としてまとめられ、政治とカネについては、党から議員への現金手渡しの慣行(いわゆるモチ代)を廃止することなどを決めた。現金手渡しなどというのはあまりに前近代的な慣行である。党活動上必要であれば、政党支部に対して振込みを行えばいいだけの話である。しかしこの政治とカネの改革には党内の抵抗が非常に大きかった。現金をもらえなくなった議員たちからは一部ではあるが不平の声が上がったし、結局当初私が目指していたインターネットによる政治資金収支の公開は見送らざるを得ない結果になった。
しかし情勢の変化は意外と早く訪れた。参議院選挙の敗北、日歯連から橋本派に対する1億円献金問題等が発生したためである。参院選後安倍幹事長に呼ばれ、党改革検証・推進委員会の事務局次長となって改革着実な実行の全体コーディネートをすることと、日歯連事件を受けての政治とカネに関するさらなる改革メニューの検討を命じられた。
事務局長の塩崎恭久議員と入念に打ち合わせをし、すでに辞任表明している安倍幹事長の残存任期中に改革を後戻りできないレベルにまで進めるために、タスクフォースを編成し、中間提言の改革メニューを細分化して、それぞれに担当責任者を置き、きめ細やかな工程管理をしながら進めていくことにした。各責任者には党改革に知見・経験と情熱を持つ若手議員を選任し、その補佐役として有能な党職員若手を配置して推進体制を整えた。その結果中間提言で示された改革メニューの具体化は驚くほど急速に進展し、候補者公募制度の詳細や、議員による人事に関する自己申告制度の導入、広報戦略の構築へ向けたコミュニケーション戦略統括委員会の創設などが続々と決まっていったのである。
私が中心となって進めた政治とカネの問題については、インターネットによる党および所属議員の政治資金収支報告の公開、政治献金を現金や小切手で受け取ることの禁止、収支報告の際の残高証明の添付義務付け、政治家個人への政策活動費の支給の廃止などを盛り込んだ。どれも従来の感覚で考えると自民党内で受容されるレベルをはるかに超える内容であったが、政治とカネに関する自民党への批判の高まりに強い危機感を持っていた安倍幹事長の決断で、党内の反対を押し切ってすべて断行することになった。
9月17日にはこれらの内容を党改革アクションプランとして発表した。また22日には有楽町マリオン前で安倍幹事長とともに街頭で党改革について訴えた。多数の聴衆が集まって、われわれ若手議員の訴える自民党改革への取り組みについて、熱心に耳を傾けてくれた。残念ながら安倍幹事長は辞任表明をしているが、今後とも党改革については何らかの立場で関わっていきたいと言ってくれている。
2004年06月15日
2004年04月27日
この原稿は埼玉8区補欠選挙での自民党公認柴山昌彦候補勝利のニュースがテレビから流れてくるのを聞きながら執筆している。先月のこのコーナーで書かせていただいたように、この補欠選挙は安倍晋三幹事長の主導する自民党改革の一環として、党として初めて全国公募により候補者を選考するなど、自民党の従来の選挙手法を根本から見直した選挙戦であり、この選挙で勝利したことの意義は非常に大きい。安倍幹事長にこの選挙を絶対に諦めずに逆に候補者選考過程の改革の一環として活用することを進言し、候補者選考から選挙戦略立案まで携わり、期間中も何度も所沢まで足を運んだ者として私も感無量である。
振り返るともともとは勝てるはずの無い選挙であった。前任者の選挙違反により自民党系の市議会議員や党支部幹部は軒並み逮捕され、一般党員の多くも警察による事情聴取を受けるなどして、地元の組織はガタガタで選挙など不可能な状態であった。そこに公募で選んだ政治経験のまったく若い弁護士を連れて行って、土地勘の無い党本部職員や他県の国会議員の秘書団が事務局としてサポートしようというのである。党の幹部からは「勝てるはずの無い選挙などしてどうするのだ。」とか「安倍幹事長を前に出して負けたら党のイメージに傷が付く。お前が責任取れるのか。」などと厳しい批判も受けた。
しかし候補者と選対スタッフが一体となってよくがんばってくれた。街宣車に乗ることよりも、イメージカラーのブルーに塗った自転車に乗って街中を走り回わることの方が多かった。毎晩夜11時まで所沢駅前にたって肉声で支持を呼びかけた。世論調査を決め細やかに行い、地域ごとに街頭演説の内容を変えたりもした。30歳代の主婦層の支持が弱いとの調査結果が出ると、みんなで知恵を出して、子育てを考えるイベントを実施したりもした。私も連夜、東京での仕事を終えた後所沢に行き、深夜までスタッフと作戦会議で熱い議論を戦わせた。終盤は安倍幹事長が連日選挙区入りして、声をからせて応援に走り回った。
その結果が今回の勝利であり、この勝利をきっかけに安倍幹事長主導の自民党改革が大きく前進することは間違いない。
現在私は安倍幹事長から新たな改革の指示を受けている。内容は政治とカネの面からの党改革を進められないかということである。自民党に限らず政治の世界にはお金の面でまだまだ透明性に欠ける部分が多い。例えば政治家各人の政治資金管理団体や政党支部の収支はいちいち総務省や都道府県選管に足を運ばなくては閲覧することができない。しかもコピーをとることは出来なくなっている。このIT革命の時代にインターネットで見ることが出来ないこと自体が問題である。自民党が他党に先駆けて、自主的に資金収支をネットで公表するような取り組みを検討していきたいと考えている。今回の選挙での勝利を弾みにして、次は政治とカネの関係を国民にとって透明で納得できる形に改革していきたい。
2004年03月16日
4月25日に埼玉8区において補欠選挙が行われることになっている。自民党議員の公職選挙違反による逮捕、辞職に伴う選挙であり、自民党にとって厳しい環境の中の選挙である。地元の市会議員や党支部幹部も多数逮捕されており埼玉県連は今回の候補者擁立を見送りたいとの意向であった。しかし、安倍晋三幹事長はこういう時だからこそあえて候補者を立てて、党本部主導で新しいタイプの選挙を戦うべきだと判断し、自身が委員長を務める党改革検証推進委員会に対して検討の指示が下った。
同委員会は政治と金の問題や候補者選考過程の透明化等、自民党の根幹にかかわる問題を徹底的に議論し、方向を出していく場であり、安倍委員長、塩崎恭久事務局長と8人の委員で構成され、私も委員に名前を連ねている。この委員会で議論した結果、候補者選考や選挙手法を抜本的に改革するモデルプロジェクトとして、今回の補欠選挙を活用しようということになった。特に今回の選挙は地元後援会を中心とした従来の選挙手法が全く使えないため、マーケティング理論を用いたイメージ選挙を展開せざるを得ないということで、NTTで企業広報の実務経験のある私がプロジェクトのチーフとなって進めていくことになった。
まずは候補者の公募から始めた。全国紙に広告を打ち、履歴書、プロフィールと政治理念に関する2000字の論文を添えて応募するように呼びかけたところ何と81人もの応募が殺到した。しかも履歴書をみたところそれぞれが個性ある優秀な人材である。自民党も捨てたものではないと思うと同時に、今までの閉鎖的な候補者選考がいかに優秀な人材を自民党から阻害してきたかを痛感させられた。
81人分の論文を私を含む4人の若手議員で審査して、23人にまで絞り込んだ。81人分の論文を読み、評価するのは大変な作業で、2晩ほど徹夜した。そして2月25日にベンチャー経営者や政治学者等の外部有職者に入ってもらって2次選考を行い、熱い議論の結果6人を最終選考に残すことにした。25歳から44歳まで、男性5人、女性1人という結果であった。
最終選考は3月3日、面接の形で行われた。安倍幹事長、青木参議院幹事長、町村総務局長ら党幹部と塩崎事務局長、そして私が審査員となった。これまでは論文とプロフィールしか見てこなかったため、どのような人物が登場するのか不安であったが、6人とも大変立派な人物で、幹部たちの鋭い質問に対しても堂々と受け答えをしていた。誰が候補者になってもいいような、甲乙付けがたい状況であったが、議論の結果、38歳の現役バリバリの弁護士が選考された。
候補者選考が終ると直ちに、その候補者と打ち合わせに入った。今回の選挙は最新の手法を使っていくので、候補者に対しては外部の専門家が付いて、洋服のアドバイスやスピーチや記者会見のトレーニングが行われた。今後も有権者の意識調査に基づく政策の打ち出しや、草の根ボランティアを中心とした選挙運動など、今まで自民党がやってこなかった手法を使って4月25日の投票日を目指していく。そしてこの選挙の成果を、自民党の新しい候補者選考、選挙運動のモデル(安倍モデル)として、今後の党の基盤強化につなげていきたいと考えている。