2003年03月04日
「世耕弘成と政治の現場を視察するツアー」と釘打って、2月19日、20日の2日間、和歌山市内の後援会青年部を中心に105人が大挙して上京し、永田町の私の職場の視察に来てくれた。
政治家が各種現場の視察に行くことは多いが、逆に若手の支持者に政治家の仕事の現場を視察してもらい、政治家がどんな環境で仕事しているのかを見てもらい、マスコミでは決して報道されることのない政治の真の姿を理解してもらおうという企画であった。
和歌山を昼前に出発した一行が、関西、羽田経由で永田町に到着したのが夕刻。早速まずは、見学コースに従って国会内を見学してもらった。途中から私も合流し、衛視さんのガイドに加えて「あそこが国対の部屋で、与党と野党が折衝する現場。」とか「今日は小泉総理はあの部屋で答弁中」といった特別解説を付け加えさせてもらった。
その後バスで自民党本部へ移動。毎朝早朝から部会が開かれて党の政策が決定される会議室群を抜けて、7階の701号室へ入室。この部屋は毎年年末に党税調が開催され、熱い議論の末に国の税制が決定される場所でもある。窓から見える国会議事堂、議員会館ビル、首相官邸、霞ヶ関の官庁群、赤坂等の景色を解説しながら、自分のスケジュール表を読み上げて、政治家として今日一日どのような動きをしたのか、またどういう会議でどういう議論が行われ、自分はどういう発言をしたのかなどを説明させてもらった。実際の場所を指し示しながらの解説であるから、相当臨場感のあるものになったと思う。
その後、森喜朗前首相が登場。私の最初の選挙で擁立した時の秘話や、当時首相の森さんに私が進言してIT国家戦略が作られた話や、小泉改革の今後の行方、政局の動向などについて約30分の講演をしてくれた。森さんの話に対しては、「テレビのイメージよりずっと親しみが持てる」、「総理大臣ってやっぱり孤独な仕事なんだな」との感想が聞かれた。さらに引き続き安倍晋三官房副長官が駆けつけてくれ、みんなの関心の高い北朝鮮との交渉の経緯や今後の動向について、官邸の現場の動きも踏まえて解説してくれた。旬のテーマなだけに全員が真剣に聞き入った。
翌朝は、まず霞ヶ関ビルの高層階にあるNTTデータのショールームを視察してもらった。ここでは電子政府が今後どのような形で進んでいくかについてプレゼンテーションが行われた。特に電子入札、電子調達の実演には各人の仕事の関係からか真剣に見入っていた人が多かった。
その後参議院議員会館に移動し、10人ずつのグループに分かれて、私が普段仕事をしている部屋を見学してもらった。みなさんはもっと広くて豪華な部屋を想像していたらしく、部屋の狭さ、院から支給の机等の質素さが意外だったようだ。
最後は話題のスポットである「丸ビル」を見学してもらい、羽田経由で一行は帰路についた。
後日参加者に感想を聞いてみると、「政治家に対する見方が変わった」との反応が多かった。後援会若手が手探りで企画してくれたツアーであったが、非常に成果が大きかったと思う。今後もこのような政治の現場を見てもらうツアーをどんどん企画していきたい。
2003年01月07日
政治、官僚、医療、教育。現在あらゆる分野で速度の違いはあるにせよ何らかの改革のメスがふるわれている。その中で最後の聖域として残っている分野が司法、裁判官のではないかと思う。特に深刻なのは国民や企業が国や自治体の行政に不満を持った場合に訴える「行政訴訟」の仕組みが十分に機能していないことである。
これからの日本の国のあり方として官主導から民主導へと大きく舵を切っていかなくてはならない。そのためには行政に事前の規制をできるだけ少なくしてその代わりに何か問題が起これば、裁判によって事後的に決着をさせていくという仕組みが重要である。現在行政サイドの規制緩和は進みつつあるが、司法サイドの対応は十分ではない。これではいくら規制緩和を進めても、結局は官僚による恣意的な行政指導が幅を利かせてしまう。
この現状を打破しようということで、昨年秋、林芳正参議院議員を会長に、私が事務局長を務め、ほかに塩崎恭久、渡辺喜美衆議院議員ら若手議員6人、新進気鋭の学者と弁護士らが一体となって「国民と行政の関係を考える若手の会」を立ち上げ、精力的に勉強と議論を重ねてきた。
会の検討の中で、行政訴訟上のいろいろな問題点が浮き彫りになってきた。特にあぜんとしたのは行政訴訟においては「門前払い」的な判決が主流となっていることである。大阪空港騒音訴訟においては、12年間も裁判を続けた上で出た判決は「本件は司法の判断にはなじまない」という趣旨のものであった。他にも「訴えの正当性がない」などの判断で逃げてしまっている判決が非常に多い。要するに「痛いから助けてくれ」と言っている人に対して、何とかしてあげようというのではなく、痛いという資格があるかどうかという議論をしている訳である。
しかも、行政訴訟は事態が発生してから3ヶ月の間に訴え出ないと無効になってしまう。情報量や資金、時間、人的リソースの少ない民間人にとって、行政を相手にする裁判の準備をわずか3ヶ月で完了するのは至難の業である。こういう面でも行政訴訟は国民に対して非常に不親切である。
また裁判官の人事制度の問題も明らかになった。裁判官の世界もサラリーマン社会である。キャリア裁判官制度のもと、上(最高裁)の判断に逆らわない判決を出していれば無難に出世できるという仕組みになっている。これでは、国民の立場に立った判断はできない。さらに「判検交流」という問題もある。多くの裁判官がキャリアステップの中で法務省に検事として出向して、行政側の弁護人を務めているのである。こんなことで司法と行政の独立性が保てるのであろうか。
こういった問題点をベースにして、今月中には若手の会としての具体的提言を発表したいと考えている。現在会における論点の整理結果をホームページ上で公開し、意見の募集を行っている。関心のある方は是非一度ご覧いただきたい。(http://www.kokumin-gyousei.jp)
昨年は、「迷惑メール法」に始まり「緑の雇用」、「高速トンネルの携帯開通」そして「司法改革」等々と国や和歌山の変革、発展に役立つ施策に正面から取り組んできた。本年も問題点を発見し、その解決に果敢に取り組む姿勢を貫いていきたい
2002年11月12日
今国会から自民党の国会対策副委員長を務めることになった。国対委員会とは法案審議等を円滑に進めるために各党が設けている窓口機関で、与党と野党間の水面下のせめぎあいが行われる舞台である。私は副委員長として総務委員会、農林水産委員会、憲法調査会の進行について責任を持つことになった。国対政治というと「料亭」とか「腹芸」といったイメージがついて回るが、私が見た限りではそのようなことはなく、与野党の折衝はあくまでも日中の会議室で行われる。
今国会には約90本の法案が提出されているが、法案を通過させるまでの作業は大変である。まず野党は形式的な本会議での趣旨説明と大臣出席の質疑を要求してくる。全議員が出席する本会議の開催日は限られてくるので、この要求をかけられると法案の審議が遅滞することになる。これを国対用語では「法案を吊るされる」という。
この「吊るし」の要求をうまく切り抜けて法案を委員会審議にまで持ち込んでからも難関がある。野党側は委員会の開催を原則として「委員会定例日」の「定時定刻」のスタートしか認めてはくれない。また必ず大臣の出席と答弁を求めてくるので、衆議院の委員会や本会議の日程、担当大臣の出張予定などの情報を収集して大臣が出席できるように調整しなければならない。政治改革の中でせっかく副大臣制度を導入したのだから、大臣に代わって副大臣の出席のもと実質的な審議ができればいいと思うのだが、野党にとっては大臣から答弁を引き出したいとの思いが強い。こういう苦労をして委員会を設定しても、予算委員会などで大きな問題が発生するとそれが解決するまでは審議が止まってしまうこともある。
こういう中を政府、与野党間を走り回って調整を行うのが国対委員会であり、国対副委員長はいろんなポストの中でもかなり「しんどい」仕事だといわれている。確かに拘束時間は非常に長く、常に国対委員会の部屋に詰めて、政府や野党の動きなどの細かい情報に耳をそばだてておかなくてはならない。自分の不手際で万一重要な法案が廃案になったりしたら大変なことであるから緊張度も高い。一方で今まであまり付き合いのなかった野党の議員とも攻守の立場を超えて人間関係の構築もできるなどやりがいのある仕事でもある。
国対歴の長いある先輩議員からは「国対は法案の中身になど関心を持たなくて良い。審議日程を頭に叩き込んで、法案を会期内に成立させることに徹するべきだ。」とのアドバイスをもらった。たしかに核心を突く鋭い指摘ではあるが、この言葉に今の国会審議の問題点が凝縮されている。与党は1本でも多くの法案を通そうとし、野党は逆に1本でも多く阻止することにこだわっている。国会は法案の中身の議論よりも、会期末までに「通す、通さない」の駆け引きの舞台となってしまっている。やはりこのあたりは早急な改革の必要を痛感する。今回の国対の実務の経験を通して、「会期の廃止と国会の通年化」、「法案の逐条審査導入」などの国会改革への見識を深めて行きたいと思う。
2002年10月01日
よく「日本のIT化が遅れている」と、自虐的に言う人がいるが本当だろうか?私は逆に日本は現在のところインフラの整備の面から見て世界でもっとも順調に、IT化が進んでいる国だと思っている。
9月8日から18日にかけて、私はインド、スリランカ、シンガポールを訪問し、各国のIT事情を中心に視察をしてきた。特に訪問前から期待していたのは、IT大国との呼び声の高いインドのIT化がどのように進んでいるかをつぶさに検証することであった。
しかしインドは決してIT大国ではなかった。確かに小学校時代から掛け算を19×19まで暗記させることなどが原因で、数学に強いソフトウェア開発の技術者数が多いことを活かして、バンガロールやハイデラバードといったソフトウェア産業の集積地を形成していることで注目を浴びてはいる。しかし所詮は米国ソフト産業の下請けであり、米国のIT不況で受注量が減少し経営が悪化している。
また、この2都市以外ではITのインフラ整備がほとんど進んでいない。電話の普及率さえインドネシアやタイの後塵を拝している状態である。パスワンIT担当大臣にインフラ整備の計画などについて問うたが、満足な答えは返ってはこなかった。
現在米国ではクリントン時代のIT政策が大幅に見直されようとしている。クリントン政権下で行われた過度の規制緩和と自由化によりADSLを中心とするインターネット接続業者が乱立、過当競争の結果、ほとんどが倒産するという状態になってしまった。そして生き残った業者が値上げを行ったため一般家庭へのブロードバンドインターネットの普及が進まなくなっている。さらに通信業界の不正経理問題が混乱に拍車をかけている。
日本では森内閣時代に定めたe-Japan基本戦略の下、適度な競争政策を展開し、着実にブロードバンドのインフラ整備と価格の低廉化を進めてきた。日本のADSL料金は世界で一番安くなっている。普及数もあと1年程度で世界一になるであろう。しかも日本は光ファイバー網の整備を着々と進めている。この和歌山市内でも光ファイバーを用いた本格的高速インターネットが月一万円を切る価格で家庭向けに提供されている。こんな国は日本だけである。携帯インターネット利用でも世界のトップを独走している。
もちろんインフラ整備だけでIT革命は進まない。米国はハリウッド映画を中心とする大量のコンテンツが強みである。インドの人材育成の方法にも学ぶべき点はたくさんある。しかし日本はもっとも手間のかかるインフラ整備の面で他を引き離して先行しているのである。今後このインフラと家電・自動車を中心とするものづくりが融合すれば大きな発展の可能性が生まれてくる。日本はいたずらに卑下することなく、コンテンツや人材育成の弱点を補強しながら自信を持ってIT革命を推進し、国の活性化を進めていくべきである。
2002年08月20日
役立つ「迷惑メール対策法」に充足感
七月末に閉会した国会で「迷惑メール対策法案」を起草し、立法に奔走した。私にとっては初めての議員立法の経験であった。
ご存知のように、昨夏あたりから携帯電話向け迷惑メールが激増して、社会問題化した。大半が男女の出会い仲介の広告で深夜に起こされる、削除が面倒、着信側が料金負担させられるといった苦情がドコモなどに寄せられていた。特に私が深刻に受け止めたのは、メールというメディアが不健全なレッテルを張られてしまう可能性と、膨大なメールが携帯のメールそのものを麻痺させてしまう危険性だった。 総務省に対策をとるよう要請したが、「通信の自由」への配慮から重い腰を上げようとはしない。そこで、私は自ら法案を起草することにした。そして、どうせ立法するなら携帯先進国日本として世界の手本となるような立法を行おうと決意した。
参議院の法制局の協力を得、何度かの徹夜作業を経て、(1)未承諾広告である旨の表示(2)発信者の氏名、連絡先などの明記(3)受信拒否の意思表示をした人への再送信の禁止(4)ソフトを用いたランダム発信の禁止―を骨格とする原案が完成した。
原案は参議院自民党の政策審議会の審査を通過し、役員会で了承され、与党で協議されるなど、早期立法に向け順調に進んでいった。
ところが、意外な問題が発生した。経済産業省が自らの所管する「特定商取引法」の改正で対処するので議員立法はやめようと言い出したのである。
だが、迷惑メール問題はあくまでも通信行為上の問題であり、商取引上のトラブルではない。私は通信規制の観点に立つ迷惑メール対策法案の方が有効であると主張したが、経産省も通販業界などを管轄する立場から一歩も引かない。迷惑メール被害が拡大する中で参議院自民VS経産省という形の政官の激しい綱引きが行われた。
事態解決に向け、特商法に詳しい茂木敏充議員と私で調整した結果、迷惑メール対策法は発信者を規制する法律とし、特商法は広告主を規制する法律として棲み分けることになった。
このような経過を経て迷惑メール対策法は四月に成立、去る七月一日から施行された。
最近ワン切りという新手口が横行、兵庫などで電話が麻痺したが、このワン切りには迷惑メール対策法に盛り込んだランダム発信禁止条項を応用することにより、規制を掛けることができると考えており、党と総務省に提言し、検討が進んでいる。
六月に来日した米国の通信政策に詳しい上院議員から迷惑メール対策法を成立させたことについて賞賛され、詳しく教えてほしいと依頼された。世界初の携帯メール規制法として国際的にも注目されはじめている。
また先日、飛行機の中で隣に座ったカップルが、「そういえば、最近迷惑メールが少なくなってよかったね」と話していた。その瞬間、ささやかかもしれないが、確実な形で人々の生活の役に立つ法律を立法できたことに充足感を感じたのであった。