2005年10月04日
去る8月8日に参議院が郵政民営化関連6法案を否決した。私はその直前に以下のような賛成討論を行い、議員各位に賛成を呼びかけたが残念ながら否決となってしまった。ただその後の解散、そして自民大勝へとつながる演説でもあったので、その要旨をご紹介しておきたい。
「郵政民営化は、あらゆる改革に連動する小泉改革の本丸です。三百三十兆円の国民の資産が郵貯、簡保を通じて国債や特殊法人向け資金という官の世界でのみ使われている事態を解消し、民間資金として活用の道を拓くことは小さな政府を実現する上でも、経済活性化の上でも喫緊の課題といえます。
参議院郵政民営化に関する特別委員会においては、82時間にわたる良識の府にふさわしい内容の濃い議論が展開されました。
委員会答弁の中での公社の生田総裁自らの「公社制度のままでは、中長期的には困難な状況となり、料金値上げやサービス打ち切りにつながりかねない」との発言を重く受け止めたいと考えます。厳しい状況を考えると、現状維持ではなく、改革を断行することで、将来の展望を切り拓くべきだと考えます。行き詰って税金投入が必要となる事態だけは避けなければなりません。また、郵政民営化はサービス向上や、資金の多様な運用、税の支払いによる財政への貢献など、国民利益に適うものであると確信いたします。
一方で、民営化によって「郵便局がなくなってしまうのではないか」といった不安が存在するのも事実です。特別委員会の審議の中で、法案がチェックされ、総理等の答弁で確認が行われています。
その一つは郵便局ネットワークは民営化後も維持されるということです。特別委員会での答弁において、小泉総理から「郵便局ネットワークは国民の資産」であり、「万一にも国民の利便に支障が生じないようにしていきたい」との決意が示されたことで、郵便局がなくなるのではないかとの懸念は払拭されました。
二つ目は、貯金・保険サービスについても、現行水準の維持が、しっかりと担保されていることです。参議院での答弁で「移行期間中でも郵便局会社による貯金・保険二社の株式保有が可能である」ことが確認されたため、これまでと同様、郵便と貯金・保険が一体となったサービスの確保が可能です。
そして三つ目は、三年ごとの見直し規定が設けられていることです。この「見直し」が「経営形態のあり方を含む全ての事象を対象とする」ものであることを小泉総理が明確に答弁されました。
私は民営化された直後のNTTに就職しました。社員にはチャレンジ精神が漲り、新商品の開発やサービスの向上へ向けた巨大なエネルギーが社内に充ちていました。
郵政民営化の改革にも多くの困難があることは否定しません。だからこそ困難を克服し、国民のよりよい生活を実現する新たなエネルギーを生み出すことが、政治の責任ではないでしょうか。
郵政民営化は小泉総理が長年信念を持って取り組んでこられたテーマですが、小泉総理よりはるか以前に提唱していた人物がいます。和歌山県出身で初代郵政大臣にあたる初代駅逓頭を務めた浜口梧陵翁であります。この浜口翁は津波から住民を守った「稲叢の火」の逸話や私財での堤防建設といった、現代のボランティアを先取りした正に「民間主導」の業績を数多く残している人物ですが、この浜口翁が郵便事業に関して「将来は民間の経営に委ねるがよい」との言葉を実質的初代郵政大臣として今から百三十四年前の明治四年に残していることを指摘させていただき、私の賛成討論とします。」
2005年05月17日
最近新聞等で駅の階段などでの携帯電話を使った女性のスカートの中の盗撮行為が検挙される事例がよく報道される。またトイレに隠しカメラを仕込んで盗撮する事例や、公衆浴場にカメラを密かに持ち込んで盗撮する事例などが雑誌等でも紹介されている。
これらの盗撮行為はいくつかの視点から、単なる「のぞき」や「いたずら」ではすまない深刻かつ重大な社会問題になりつつある。まずひとつには技術の進歩でカメラが極端に小型化することで、被害者が全く気づかないうちに撮影が行われてしまうことである。無線を用いるような盗撮カメラも出てきている。また最近の盗撮は組織的に行われるケースが増えている。特に公衆浴場の盗撮などでは女性が協力するような事件も発生している。さらにこれらの映像は最近ブロードバンド化が著しいインターネットを通じて流通・販売されている。
しかしこれら盗撮行為に対する法規制は十分ではない。法律としては軽犯罪法に盗視の罪が規定されているが、この規定はいわゆる単純なのぞき行為を想定したもので科料1万円という非常に軽微な刑罰しか用意されていない。条例では各都道府県の迷惑防止条例が盗撮行為に関する罰則を定めてはいるが、定義が曖昧かつバラバラであったり、罰則が罰金ですむ県から懲役刑のある県まで幅が広かったりして、全国一律的に十分な取り締まりが行われていない。
そこでこれら盗撮行為を厳しく罰する新しい法律を作ろうと言うことで、私が提唱して参議院自民党として「盗撮防止法(仮称)」の議員立法に取り組むことになった。主な内容は、(1)盗撮行為そのものに懲役刑を含む重い刑罰を科する。(2)違法な盗撮により制作されたビデオなどの販売やインターネットにおける流通に対しても罰則を設ける。(3)公衆トイレや公衆浴場などの施設の管理者が盗撮防止に努力すべきであるという趣旨の努力規定を設ける。というものである。
もちろん盗撮には報道目的等正当な理由があるものもある。こいうったものまで規制の対象としてしまわないために、われわれの法案も目的を「性的な盗撮を禁止することにより個人の性的尊厳を保護する」というものにし、さらに盗撮行為の定義も「正当な理由なく、浴場、便所など通常人が衣服をつけていない場所における撮影」と「正当な理由なく下着や透視道具を用いて撮影すること」などと明確なものにし、通常の表現の自由や報道の自由を侵害しないように十分な配慮を行っている。
盗撮は女性の性的尊厳を著しく傷つける行為である。議員立法によりこれら盗撮行為に対して厳正に対処することにより女性がより安心して暮らせる社会を目指したい。
私はこれまで迷惑メール対策法をはじめ多くの議員立法に取り組んできた。今後も国会議員本来の仕事である「立法」に積極的に取り組んでいきたい。
2005年04月05日
今年1月に、東京近郊のゴルフ場で、貴重品預けロッカーから銀行のキャッシュカードを持ち出し、磁気記録をコピーした偽造カードを作り、口座から預金を引き出す事件が発生し、偽造グループのメンバーが逮捕される事件が発生した。
手口は、他人のキャッシュカードの磁気記録情報を不正に読み取り、別のカードに専用の読み取り装置を用いて磁気の部分から情報を読み取り偽造カードを作るスキミングといわれる手法。暗証番号はロッカーの上に仕込んだ隠しカメラでロッカー用に入力する4桁の暗証番号を把握。多くの被害者が銀行の暗証番号とロッカーの暗証番号を一緒にしていたため、被害に遭うことになった。
また偽造ではなく盗難キャッシュカードによる被害も目立ってきている。キャッシュカードを盗まれても気づくのに時間がかかるケースが多く、その間に口座の残高丸ごと引き落とされてしまう。
一連の事件の中で問題なのは被害にあった預金者をどう救済するかである。銀行は基本的には自分たちには責任はないという姿勢で、損害賠償にはなかなか応じない。預金者は自らに過失がなくても現状では偽造・盗難キャッシュカードの被害に遭えば泣き寝入りするしかない状況であった。しかし銀行側にも30年前からの数字4桁の認証方式を技術の進化した現在も使い続けていたという落ち度がある。
そこで自民党では「偽造・盗難キャッシュカード問題に関する小委員会」を設置し、私もメンバーに入って検討を行ってきた。メンバーの共通した認識は預金者の立場に立った対応策が必要であるということであった。銀行側のコスト負担増を心配する意見も中にはあったが、企業に対して最大何千億円の債権放棄をしている銀行が、何の落ち度もない一般庶民の虎の子貯金数百万円の補償やそのセキュリティ対策投資に後ろ向きであることには政治家として納得がいかないという意見が大勢を占めた。
そして約1ヶ月の集中的議論の結果、去る3月29日にとりまとめ、すべての預貯金取り扱い金融機関に対し、偽造・盗難キャッシュカード犯罪については、預金者の過失を金融機関側が立証できない限り被害補償を義務づける法案を、今国会に議員立法で提出する方針を決めた。
また金融機関に対しては、早急にICキャッシュカードの導入を進め、偽造されやすい4桁の暗証番号をやめて、手のひら静脈や眼の虹彩を用いた最新の認証技術を取り入れることなど要請した。
金融業界もようやく重い腰を上げて、対策や補償に取り組む姿勢を見せ始めたが、まだまだ不十分である。特に偽造カードだけを対象にして、盗難カードを別扱いにしようとする姿勢には大いに疑問を感じる。また業界としての対策も全国銀行協会会長が記者会見で口頭説明しただけで、何ら公式の文書は発出されていない。預金者をなめきった対応である。
今後は議員立法の内容の詰めを行い、今国会中の法案提出を目指していきたい。
2005年02月22日
現在私は自民党政策審議会の副会長を拝命している。政策審議会というのは自民党が各種法案等について党として承認するかどうかを決定する機関である。
自民党では議員立法や内閣が提出してくる法案について、まずは政務調査会の各部会において議論が行われる。部会を通過してきた法案をさらに高い視点でチェックするのが政策審議会の仕事である。この政策審議会を通過すると、今度は総務会にかかり、総務会で了承されると、党として正式に法案を認めたことになり、法案への賛否について党議拘束がかかり、勝手に反対したりすると処分の対象となるのである。
政策審議会は法律に関して、精緻なチェックを行える最後の関門であり、その任務は重要である。しかしすべての法案について事前説明を受け、問題点がないかどうかを確認し、政策審議会本番に備えて準備をしなければならないから大変である。今国会には80本以上の法案が上程される予定(これでも例年に比べ少ない方だといわれている)である。今週だけでも、「半島振興法の一部を改正する法律案」、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律案」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案」、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」、「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案」、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案」、「公職選挙法の一部を改正する法律案」というそれぞれ重要な意味を持つ7本の法律のチェックをさせてもらった。
チェックをする上で私が特に重点を置いているのが、法案がいたずらに役所に権限を与えるようなことになっていないか、規制緩和の流れに逆行していないか、指定法人を増やすなど天下り増加につながる仕掛けが潜んでいないか、民間で実施できることを役所で囲い込もうとしていないか、などの点である。問題があれば政策審議会の現場で発言し、厳しく指摘をさせてもらっている。
しかし一方で現在の法案審議の行い方には重大な欠陥があると言わざるを得ない。たった十数人の政策審議委員ですべての法案を完全にチェックすることは不可能である。審議の時間も十分には与えられていない。しかもいったん総務会まで通過してしまうと、党議拘束がかかり、自民党の議員は賛成することが前提になってしまい、国会審議での議論を十分に行うことができない。
これからは党内でのチェックは軽めに済ませ、党議拘束を緩くするかわりに、国会内での審議に十分時間をかけて、たとえば国会では法案を逐条で審査するようなことが必要であると考えてい
2004年09月28日
前々回の本欄にも書かせてもらったが、埼玉8区の補欠選挙をきっかけに、安倍晋三幹事長が進める党改革検証・推進委員会の「政治とカネのあり方」部会長に任命され、党改革のもっとも難しい分野を担当することになった。6月2日には党改革の中間提言としてまとめられ、政治とカネについては、党から議員への現金手渡しの慣行(いわゆるモチ代)を廃止することなどを決めた。現金手渡しなどというのはあまりに前近代的な慣行である。党活動上必要であれば、政党支部に対して振込みを行えばいいだけの話である。しかしこの政治とカネの改革には党内の抵抗が非常に大きかった。現金をもらえなくなった議員たちからは一部ではあるが不平の声が上がったし、結局当初私が目指していたインターネットによる政治資金収支の公開は見送らざるを得ない結果になった。
しかし情勢の変化は意外と早く訪れた。参議院選挙の敗北、日歯連から橋本派に対する1億円献金問題等が発生したためである。参院選後安倍幹事長に呼ばれ、党改革検証・推進委員会の事務局次長となって改革着実な実行の全体コーディネートをすることと、日歯連事件を受けての政治とカネに関するさらなる改革メニューの検討を命じられた。
事務局長の塩崎恭久議員と入念に打ち合わせをし、すでに辞任表明している安倍幹事長の残存任期中に改革を後戻りできないレベルにまで進めるために、タスクフォースを編成し、中間提言の改革メニューを細分化して、それぞれに担当責任者を置き、きめ細やかな工程管理をしながら進めていくことにした。各責任者には党改革に知見・経験と情熱を持つ若手議員を選任し、その補佐役として有能な党職員若手を配置して推進体制を整えた。その結果中間提言で示された改革メニューの具体化は驚くほど急速に進展し、候補者公募制度の詳細や、議員による人事に関する自己申告制度の導入、広報戦略の構築へ向けたコミュニケーション戦略統括委員会の創設などが続々と決まっていったのである。
私が中心となって進めた政治とカネの問題については、インターネットによる党および所属議員の政治資金収支報告の公開、政治献金を現金や小切手で受け取ることの禁止、収支報告の際の残高証明の添付義務付け、政治家個人への政策活動費の支給の廃止などを盛り込んだ。どれも従来の感覚で考えると自民党内で受容されるレベルをはるかに超える内容であったが、政治とカネに関する自民党への批判の高まりに強い危機感を持っていた安倍幹事長の決断で、党内の反対を押し切ってすべて断行することになった。
9月17日にはこれらの内容を党改革アクションプランとして発表した。また22日には有楽町マリオン前で安倍幹事長とともに街頭で党改革について訴えた。多数の聴衆が集まって、われわれ若手議員の訴える自民党改革への取り組みについて、熱心に耳を傾けてくれた。残念ながら安倍幹事長は辞任表明をしているが、今後とも党改革については何らかの立場で関わっていきたいと言ってくれている。