2006年02月28日
一昨年からロシアの若手国会議員との交流に力を入れている。一昨年若手議員数名と日本青年会議所関係者とでモスクワを訪問し、ロシア側若手議員と数回会合を持ち、昨年春にはロシアの8名の国会議員が日本を訪問、滞在中に今後若手議員交流を強化していくことで合意し覚書きを交わした。さらに昨年末私と松山政司参議院議員でモスクワを訪問し、プーチン政権下での有力政治家で日ロ賢人会議のロシア側座長でもあるルシコフ・モスクワ市長立ち会いの下、私とロシアの若手有力議員であるネフョードフ国家員議員との間で日ロ若手国会議員の会設立の協定書に正式に調印を行った。
先週、ネフョードフ議員を団長とするロシア若手議員9名が来日した。来日の目的は前回の協定を受けて日ロ若手議員の間で両国の関係強化に向けた政策協議を行うことにある。
今回の協議では日ロでどのような経済協力関係を築くことができるかについて、4時間を超える集中討議を行った。その結果、お互いに京都議定書を批准しているという立場かから地球温暖化対策について両国国会議員で勉強を深めていくことで合意した。またそれに関連した具体的テーマとして、DME(ジメチルエチル)をエネルギー源として活用しいくための技術開発についても具体的に議論し、行動していくことも決めた。
現在日ロの政治家間のパイプは極端に細くなっている。外務省によると議員レベルの交流で定期的かつ着実に交流を継続しているのは現在のところ私が主催する日ロ若手国会議員の会だけだそうである。
また今回は公式の協議以外にも意義多い来日であった。私とネフョードフ議員とは4回目の相互訪問になり、何度も酒も酌み交わしており、夫人とも面識ができており、お互いに信頼感と友情が芽生えてきている。今回はロシア側議員を広島に案内し、原爆ドーム等を見学してもらい、地元青年会議所の皆さんとピースフォーラムという話し合いの場を持ってもらった。ネフョードフ議員は核実験場の近くで生まれ育ち、両親とも癌でなくしていることから、核廃絶にも熱心に取り組んでおり、核廃絶に関する取り組みも両国議員でやっていこうといことになった。
夜はお互いに居酒屋で酒を酌み交わしながら、フランクな議論をした。もちろん北方領土問題でもこちらからかなり言いたいことも言わせてもらった。家族のこと、選挙の悩みについてもお互いに本音を話し、いずこの国も政治家のライフスタイルはそんなに変わらないのだなということもわかった。
次回は今年の夏以降、シベリアのトムスクという町で開催することが決まった。トムスクはこれから日本に向かって延びてくる石油ガスパイプラインの重要中継基地でもある。また天然ガス田が周辺に存在し、天然ガスを利用したDME開発について両国銀合同で実地調査もできるということで次回の会議場所に選定された。
今後の日中関係の難しさを考えた場合、その隣の大国であるロシアとの関係は非常に重要になってくる。若手議員同士のまだまだ細いパイプかもしれないが、継続は力なりの精神で今後とも交流を続けていきたい。
2006年01月17日
昨年末、生まれて初めて著書を出版するという経験をすることになった。タイトルは「プロフェッショナル広報戦略」(世耕弘成著、ゴマブックス)
実は昨年の選挙終了直後から、複数の出版社から本を出版しないかというお誘いをいただいていた。選挙における自民党コミュニケーション戦略チームの活動状況をはじめとする広報戦略の実情や裏話に関する内容を文章にして、本として出版しようという企画が数多く持ち込まれた。
しかし、中々乗り気にはなれなかった。というのは、この間の選挙の主役はあくまでも小泉総理や各候補者であり、選挙大勝の原因は小泉総理の明確な姿勢とそれについて行った自民党の覚悟である。あくまでも広報はそれをバックアップしたに過ぎない。新聞やテレビのインタビューには情報公開や後世に記録を残すという観点から応えてきたが、自ら本を出版するという気にはどうにもなれなかった。
そんな中、旧知の仲であるゴマブックスの嬉野勝美社長からも出版のお話をいただいた。嬉野さんは、リクルート社出身のやり手出版経営者で、業界の革命児といわれている人物で、既成概念を打ち破る出版物を多数手がけてきている。私と嬉野さんは昨年春にベンチャー経営者との懇談の場で出会い、意気投合していた。
ゴマブックスの嬉野さんの提案は他の出版社の提案とは少し異なっていた。他の出版社の提案のほとんどが「選挙広報の裏話を書いてほしい」というものであったのに対して、ゴマブックスの提案は「企業の広報担当者へのメッセージとしてまとめないか」との話であった。これには少々心を動かされた。企業や組織の中で、コミュニケーション機能の重要性に気づいていて、それを組織の中で一生懸命主張するものの、トップや上司の理解不足で苦労しているビジネスマンは多数いるはずである。かくいう私も初当選以来、自民党や首相官邸のコミュニケーション機能の改革でずいぶんと苦労をしてきた。NTTの広報部での経験、首相官邸や自民党の広報改革の経験、それに加えて今回の選挙での経験をベースにして、企業や組織の中で改革を志す人へのメッセージになればという思いで、出版することを決意したのである。
そこからの執筆作業は大変であった。ビジネスマンをメインターゲットとした本なので、年末年始休暇に間に合わせることが重要だとの判断で、クリスマス頃の出版とすることを決めたため、11月から突貫工事で執筆を行った。もちろん他の政務をこなしながら、夜中に睡眠時間を削りながらの執筆であった。11月末には一応何とか原稿を一通り仕上げることができたが、そこからは編集、校正の作業が待っていた。間が悪いことに12月初旬にロシア出張が入ってしまい、東京-モスクワ間でメールやFAXのやり取りをしながらの作業となった。そして12月20日過ぎにようやく印刷があがり、書店に並び始めた。
読者の反応は上々で、書店でも比較的目立つ場所に平積みされている。初刷りの2万部に加えて年明けには重版も決定した。まだお読みいただいていない方は、是非一度書店で「プロフェッショナル広報戦略」(世耕弘成著、ゴマブックス)を手に取ってみていただきたい。
2005年10月04日
去る8月8日に参議院が郵政民営化関連6法案を否決した。私はその直前に以下のような賛成討論を行い、議員各位に賛成を呼びかけたが残念ながら否決となってしまった。ただその後の解散、そして自民大勝へとつながる演説でもあったので、その要旨をご紹介しておきたい。
「郵政民営化は、あらゆる改革に連動する小泉改革の本丸です。三百三十兆円の国民の資産が郵貯、簡保を通じて国債や特殊法人向け資金という官の世界でのみ使われている事態を解消し、民間資金として活用の道を拓くことは小さな政府を実現する上でも、経済活性化の上でも喫緊の課題といえます。
参議院郵政民営化に関する特別委員会においては、82時間にわたる良識の府にふさわしい内容の濃い議論が展開されました。
委員会答弁の中での公社の生田総裁自らの「公社制度のままでは、中長期的には困難な状況となり、料金値上げやサービス打ち切りにつながりかねない」との発言を重く受け止めたいと考えます。厳しい状況を考えると、現状維持ではなく、改革を断行することで、将来の展望を切り拓くべきだと考えます。行き詰って税金投入が必要となる事態だけは避けなければなりません。また、郵政民営化はサービス向上や、資金の多様な運用、税の支払いによる財政への貢献など、国民利益に適うものであると確信いたします。
一方で、民営化によって「郵便局がなくなってしまうのではないか」といった不安が存在するのも事実です。特別委員会の審議の中で、法案がチェックされ、総理等の答弁で確認が行われています。
その一つは郵便局ネットワークは民営化後も維持されるということです。特別委員会での答弁において、小泉総理から「郵便局ネットワークは国民の資産」であり、「万一にも国民の利便に支障が生じないようにしていきたい」との決意が示されたことで、郵便局がなくなるのではないかとの懸念は払拭されました。
二つ目は、貯金・保険サービスについても、現行水準の維持が、しっかりと担保されていることです。参議院での答弁で「移行期間中でも郵便局会社による貯金・保険二社の株式保有が可能である」ことが確認されたため、これまでと同様、郵便と貯金・保険が一体となったサービスの確保が可能です。
そして三つ目は、三年ごとの見直し規定が設けられていることです。この「見直し」が「経営形態のあり方を含む全ての事象を対象とする」ものであることを小泉総理が明確に答弁されました。
私は民営化された直後のNTTに就職しました。社員にはチャレンジ精神が漲り、新商品の開発やサービスの向上へ向けた巨大なエネルギーが社内に充ちていました。
郵政民営化の改革にも多くの困難があることは否定しません。だからこそ困難を克服し、国民のよりよい生活を実現する新たなエネルギーを生み出すことが、政治の責任ではないでしょうか。
郵政民営化は小泉総理が長年信念を持って取り組んでこられたテーマですが、小泉総理よりはるか以前に提唱していた人物がいます。和歌山県出身で初代郵政大臣にあたる初代駅逓頭を務めた浜口梧陵翁であります。この浜口翁は津波から住民を守った「稲叢の火」の逸話や私財での堤防建設といった、現代のボランティアを先取りした正に「民間主導」の業績を数多く残している人物ですが、この浜口翁が郵便事業に関して「将来は民間の経営に委ねるがよい」との言葉を実質的初代郵政大臣として今から百三十四年前の明治四年に残していることを指摘させていただき、私の賛成討論とします。」
2005年05月17日
最近新聞等で駅の階段などでの携帯電話を使った女性のスカートの中の盗撮行為が検挙される事例がよく報道される。またトイレに隠しカメラを仕込んで盗撮する事例や、公衆浴場にカメラを密かに持ち込んで盗撮する事例などが雑誌等でも紹介されている。
これらの盗撮行為はいくつかの視点から、単なる「のぞき」や「いたずら」ではすまない深刻かつ重大な社会問題になりつつある。まずひとつには技術の進歩でカメラが極端に小型化することで、被害者が全く気づかないうちに撮影が行われてしまうことである。無線を用いるような盗撮カメラも出てきている。また最近の盗撮は組織的に行われるケースが増えている。特に公衆浴場の盗撮などでは女性が協力するような事件も発生している。さらにこれらの映像は最近ブロードバンド化が著しいインターネットを通じて流通・販売されている。
しかしこれら盗撮行為に対する法規制は十分ではない。法律としては軽犯罪法に盗視の罪が規定されているが、この規定はいわゆる単純なのぞき行為を想定したもので科料1万円という非常に軽微な刑罰しか用意されていない。条例では各都道府県の迷惑防止条例が盗撮行為に関する罰則を定めてはいるが、定義が曖昧かつバラバラであったり、罰則が罰金ですむ県から懲役刑のある県まで幅が広かったりして、全国一律的に十分な取り締まりが行われていない。
そこでこれら盗撮行為を厳しく罰する新しい法律を作ろうと言うことで、私が提唱して参議院自民党として「盗撮防止法(仮称)」の議員立法に取り組むことになった。主な内容は、(1)盗撮行為そのものに懲役刑を含む重い刑罰を科する。(2)違法な盗撮により制作されたビデオなどの販売やインターネットにおける流通に対しても罰則を設ける。(3)公衆トイレや公衆浴場などの施設の管理者が盗撮防止に努力すべきであるという趣旨の努力規定を設ける。というものである。
もちろん盗撮には報道目的等正当な理由があるものもある。こいうったものまで規制の対象としてしまわないために、われわれの法案も目的を「性的な盗撮を禁止することにより個人の性的尊厳を保護する」というものにし、さらに盗撮行為の定義も「正当な理由なく、浴場、便所など通常人が衣服をつけていない場所における撮影」と「正当な理由なく下着や透視道具を用いて撮影すること」などと明確なものにし、通常の表現の自由や報道の自由を侵害しないように十分な配慮を行っている。
盗撮は女性の性的尊厳を著しく傷つける行為である。議員立法によりこれら盗撮行為に対して厳正に対処することにより女性がより安心して暮らせる社会を目指したい。
私はこれまで迷惑メール対策法をはじめ多くの議員立法に取り組んできた。今後も国会議員本来の仕事である「立法」に積極的に取り組んでいきたい。
2005年04月05日
今年1月に、東京近郊のゴルフ場で、貴重品預けロッカーから銀行のキャッシュカードを持ち出し、磁気記録をコピーした偽造カードを作り、口座から預金を引き出す事件が発生し、偽造グループのメンバーが逮捕される事件が発生した。
手口は、他人のキャッシュカードの磁気記録情報を不正に読み取り、別のカードに専用の読み取り装置を用いて磁気の部分から情報を読み取り偽造カードを作るスキミングといわれる手法。暗証番号はロッカーの上に仕込んだ隠しカメラでロッカー用に入力する4桁の暗証番号を把握。多くの被害者が銀行の暗証番号とロッカーの暗証番号を一緒にしていたため、被害に遭うことになった。
また偽造ではなく盗難キャッシュカードによる被害も目立ってきている。キャッシュカードを盗まれても気づくのに時間がかかるケースが多く、その間に口座の残高丸ごと引き落とされてしまう。
一連の事件の中で問題なのは被害にあった預金者をどう救済するかである。銀行は基本的には自分たちには責任はないという姿勢で、損害賠償にはなかなか応じない。預金者は自らに過失がなくても現状では偽造・盗難キャッシュカードの被害に遭えば泣き寝入りするしかない状況であった。しかし銀行側にも30年前からの数字4桁の認証方式を技術の進化した現在も使い続けていたという落ち度がある。
そこで自民党では「偽造・盗難キャッシュカード問題に関する小委員会」を設置し、私もメンバーに入って検討を行ってきた。メンバーの共通した認識は預金者の立場に立った対応策が必要であるということであった。銀行側のコスト負担増を心配する意見も中にはあったが、企業に対して最大何千億円の債権放棄をしている銀行が、何の落ち度もない一般庶民の虎の子貯金数百万円の補償やそのセキュリティ対策投資に後ろ向きであることには政治家として納得がいかないという意見が大勢を占めた。
そして約1ヶ月の集中的議論の結果、去る3月29日にとりまとめ、すべての預貯金取り扱い金融機関に対し、偽造・盗難キャッシュカード犯罪については、預金者の過失を金融機関側が立証できない限り被害補償を義務づける法案を、今国会に議員立法で提出する方針を決めた。
また金融機関に対しては、早急にICキャッシュカードの導入を進め、偽造されやすい4桁の暗証番号をやめて、手のひら静脈や眼の虹彩を用いた最新の認証技術を取り入れることなど要請した。
金融業界もようやく重い腰を上げて、対策や補償に取り組む姿勢を見せ始めたが、まだまだ不十分である。特に偽造カードだけを対象にして、盗難カードを別扱いにしようとする姿勢には大いに疑問を感じる。また業界としての対策も全国銀行協会会長が記者会見で口頭説明しただけで、何ら公式の文書は発出されていない。預金者をなめきった対応である。
今後は議員立法の内容の詰めを行い、今国会中の法案提出を目指していきたい。