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【公式】世耕 弘成【和歌山から日本を再起動!!】
2006年01月17日
昨年末、生まれて初めて著書を出版するという経験をすることになった。タイトルは「プロフェッショナル広報戦略」(世耕弘成著、ゴマブックス)
実は昨年の選挙終了直後から、複数の出版社から本を出版しないかというお誘いをいただいていた。選挙における自民党コミュニケーション戦略チームの活動状況をはじめとする広報戦略の実情や裏話に関する内容を文章にして、本として出版しようという企画が数多く持ち込まれた。
しかし、中々乗り気にはなれなかった。というのは、この間の選挙の主役はあくまでも小泉総理や各候補者であり、選挙大勝の原因は小泉総理の明確な姿勢とそれについて行った自民党の覚悟である。あくまでも広報はそれをバックアップしたに過ぎない。新聞やテレビのインタビューには情報公開や後世に記録を残すという観点から応えてきたが、自ら本を出版するという気にはどうにもなれなかった。
そんな中、旧知の仲であるゴマブックスの嬉野勝美社長からも出版のお話をいただいた。嬉野さんは、リクルート社出身のやり手出版経営者で、業界の革命児といわれている人物で、既成概念を打ち破る出版物を多数手がけてきている。私と嬉野さんは昨年春にベンチャー経営者との懇談の場で出会い、意気投合していた。
ゴマブックスの嬉野さんの提案は他の出版社の提案とは少し異なっていた。他の出版社の提案のほとんどが「選挙広報の裏話を書いてほしい」というものであったのに対して、ゴマブックスの提案は「企業の広報担当者へのメッセージとしてまとめないか」との話であった。これには少々心を動かされた。企業や組織の中で、コミュニケーション機能の重要性に気づいていて、それを組織の中で一生懸命主張するものの、トップや上司の理解不足で苦労しているビジネスマンは多数いるはずである。かくいう私も初当選以来、自民党や首相官邸のコミュニケーション機能の改革でずいぶんと苦労をしてきた。NTTの広報部での経験、首相官邸や自民党の広報改革の経験、それに加えて今回の選挙での経験をベースにして、企業や組織の中で改革を志す人へのメッセージになればという思いで、出版することを決意したのである。
そこからの執筆作業は大変であった。ビジネスマンをメインターゲットとした本なので、年末年始休暇に間に合わせることが重要だとの判断で、クリスマス頃の出版とすることを決めたため、11月から突貫工事で執筆を行った。もちろん他の政務をこなしながら、夜中に睡眠時間を削りながらの執筆であった。11月末には一応何とか原稿を一通り仕上げることができたが、そこからは編集、校正の作業が待っていた。間が悪いことに12月初旬にロシア出張が入ってしまい、東京-モスクワ間でメールやFAXのやり取りをしながらの作業となった。そして12月20日過ぎにようやく印刷があがり、書店に並び始めた。
読者の反応は上々で、書店でも比較的目立つ場所に平積みされている。初刷りの2万部に加えて年明けには重版も決定した。まだお読みいただいていない方は、是非一度書店で「プロフェッショナル広報戦略」(世耕弘成著、ゴマブックス)を手に取ってみていただきたい。
2005年10月04日
去る8月8日に参議院が郵政民営化関連6法案を否決した。私はその直前に以下のような賛成討論を行い、議員各位に賛成を呼びかけたが残念ながら否決となってしまった。ただその後の解散、そして自民大勝へとつながる演説でもあったので、その要旨をご紹介しておきたい。
「郵政民営化は、あらゆる改革に連動する小泉改革の本丸です。三百三十兆円の国民の資産が郵貯、簡保を通じて国債や特殊法人向け資金という官の世界でのみ使われている事態を解消し、民間資金として活用の道を拓くことは小さな政府を実現する上でも、経済活性化の上でも喫緊の課題といえます。
参議院郵政民営化に関する特別委員会においては、82時間にわたる良識の府にふさわしい内容の濃い議論が展開されました。
委員会答弁の中での公社の生田総裁自らの「公社制度のままでは、中長期的には困難な状況となり、料金値上げやサービス打ち切りにつながりかねない」との発言を重く受け止めたいと考えます。厳しい状況を考えると、現状維持ではなく、改革を断行することで、将来の展望を切り拓くべきだと考えます。行き詰って税金投入が必要となる事態だけは避けなければなりません。また、郵政民営化はサービス向上や、資金の多様な運用、税の支払いによる財政への貢献など、国民利益に適うものであると確信いたします。
一方で、民営化によって「郵便局がなくなってしまうのではないか」といった不安が存在するのも事実です。特別委員会の審議の中で、法案がチェックされ、総理等の答弁で確認が行われています。
その一つは郵便局ネットワークは民営化後も維持されるということです。特別委員会での答弁において、小泉総理から「郵便局ネットワークは国民の資産」であり、「万一にも国民の利便に支障が生じないようにしていきたい」との決意が示されたことで、郵便局がなくなるのではないかとの懸念は払拭されました。
二つ目は、貯金・保険サービスについても、現行水準の維持が、しっかりと担保されていることです。参議院での答弁で「移行期間中でも郵便局会社による貯金・保険二社の株式保有が可能である」ことが確認されたため、これまでと同様、郵便と貯金・保険が一体となったサービスの確保が可能です。
そして三つ目は、三年ごとの見直し規定が設けられていることです。この「見直し」が「経営形態のあり方を含む全ての事象を対象とする」ものであることを小泉総理が明確に答弁されました。
私は民営化された直後のNTTに就職しました。社員にはチャレンジ精神が漲り、新商品の開発やサービスの向上へ向けた巨大なエネルギーが社内に充ちていました。
郵政民営化の改革にも多くの困難があることは否定しません。だからこそ困難を克服し、国民のよりよい生活を実現する新たなエネルギーを生み出すことが、政治の責任ではないでしょうか。
郵政民営化は小泉総理が長年信念を持って取り組んでこられたテーマですが、小泉総理よりはるか以前に提唱していた人物がいます。和歌山県出身で初代郵政大臣にあたる初代駅逓頭を務めた浜口梧陵翁であります。この浜口翁は津波から住民を守った「稲叢の火」の逸話や私財での堤防建設といった、現代のボランティアを先取りした正に「民間主導」の業績を数多く残している人物ですが、この浜口翁が郵便事業に関して「将来は民間の経営に委ねるがよい」との言葉を実質的初代郵政大臣として今から百三十四年前の明治四年に残していることを指摘させていただき、私の賛成討論とします。」
2005年04月05日
今年1月に、東京近郊のゴルフ場で、貴重品預けロッカーから銀行のキャッシュカードを持ち出し、磁気記録をコピーした偽造カードを作り、口座から預金を引き出す事件が発生し、偽造グループのメンバーが逮捕される事件が発生した。
手口は、他人のキャッシュカードの磁気記録情報を不正に読み取り、別のカードに専用の読み取り装置を用いて磁気の部分から情報を読み取り偽造カードを作るスキミングといわれる手法。暗証番号はロッカーの上に仕込んだ隠しカメラでロッカー用に入力する4桁の暗証番号を把握。多くの被害者が銀行の暗証番号とロッカーの暗証番号を一緒にしていたため、被害に遭うことになった。
また偽造ではなく盗難キャッシュカードによる被害も目立ってきている。キャッシュカードを盗まれても気づくのに時間がかかるケースが多く、その間に口座の残高丸ごと引き落とされてしまう。
一連の事件の中で問題なのは被害にあった預金者をどう救済するかである。銀行は基本的には自分たちには責任はないという姿勢で、損害賠償にはなかなか応じない。預金者は自らに過失がなくても現状では偽造・盗難キャッシュカードの被害に遭えば泣き寝入りするしかない状況であった。しかし銀行側にも30年前からの数字4桁の認証方式を技術の進化した現在も使い続けていたという落ち度がある。
そこで自民党では「偽造・盗難キャッシュカード問題に関する小委員会」を設置し、私もメンバーに入って検討を行ってきた。メンバーの共通した認識は預金者の立場に立った対応策が必要であるということであった。銀行側のコスト負担増を心配する意見も中にはあったが、企業に対して最大何千億円の債権放棄をしている銀行が、何の落ち度もない一般庶民の虎の子貯金数百万円の補償やそのセキュリティ対策投資に後ろ向きであることには政治家として納得がいかないという意見が大勢を占めた。
そして約1ヶ月の集中的議論の結果、去る3月29日にとりまとめ、すべての預貯金取り扱い金融機関に対し、偽造・盗難キャッシュカード犯罪については、預金者の過失を金融機関側が立証できない限り被害補償を義務づける法案を、今国会に議員立法で提出する方針を決めた。
また金融機関に対しては、早急にICキャッシュカードの導入を進め、偽造されやすい4桁の暗証番号をやめて、手のひら静脈や眼の虹彩を用いた最新の認証技術を取り入れることなど要請した。
金融業界もようやく重い腰を上げて、対策や補償に取り組む姿勢を見せ始めたが、まだまだ不十分である。特に偽造カードだけを対象にして、盗難カードを別扱いにしようとする姿勢には大いに疑問を感じる。また業界としての対策も全国銀行協会会長が記者会見で口頭説明しただけで、何ら公式の文書は発出されていない。預金者をなめきった対応である。
今後は議員立法の内容の詰めを行い、今国会中の法案提出を目指していきたい。
2005年02月22日
現在私は自民党政策審議会の副会長を拝命している。政策審議会というのは自民党が各種法案等について党として承認するかどうかを決定する機関である。
自民党では議員立法や内閣が提出してくる法案について、まずは政務調査会の各部会において議論が行われる。部会を通過してきた法案をさらに高い視点でチェックするのが政策審議会の仕事である。この政策審議会を通過すると、今度は総務会にかかり、総務会で了承されると、党として正式に法案を認めたことになり、法案への賛否について党議拘束がかかり、勝手に反対したりすると処分の対象となるのである。
政策審議会は法律に関して、精緻なチェックを行える最後の関門であり、その任務は重要である。しかしすべての法案について事前説明を受け、問題点がないかどうかを確認し、政策審議会本番に備えて準備をしなければならないから大変である。今国会には80本以上の法案が上程される予定(これでも例年に比べ少ない方だといわれている)である。今週だけでも、「半島振興法の一部を改正する法律案」、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律案」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案」、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」、「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案」、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案」、「公職選挙法の一部を改正する法律案」というそれぞれ重要な意味を持つ7本の法律のチェックをさせてもらった。
チェックをする上で私が特に重点を置いているのが、法案がいたずらに役所に権限を与えるようなことになっていないか、規制緩和の流れに逆行していないか、指定法人を増やすなど天下り増加につながる仕掛けが潜んでいないか、民間で実施できることを役所で囲い込もうとしていないか、などの点である。問題があれば政策審議会の現場で発言し、厳しく指摘をさせてもらっている。
しかし一方で現在の法案審議の行い方には重大な欠陥があると言わざるを得ない。たった十数人の政策審議委員ですべての法案を完全にチェックすることは不可能である。審議の時間も十分には与えられていない。しかもいったん総務会まで通過してしまうと、党議拘束がかかり、自民党の議員は賛成することが前提になってしまい、国会審議での議論を十分に行うことができない。
これからは党内でのチェックは軽めに済ませ、党議拘束を緩くするかわりに、国会内での審議に十分時間をかけて、たとえば国会では法案を逐条で審査するようなことが必要であると考えてい