党派超え「年金の在り方」模索を
― 年金改革法案成立過程での混乱 ―
今国会の最重要法案であった年金改革法が6月4日から5日にかけて徹夜の本会議を通して参議院で可決され成立した。4日午後1時にスタートしてから翌朝9時半まで、延々20時間近い本会議となり、くたくたに疲れ果てた。
それにしても今回の野党の行動には首を傾けざるを得ない。まずは国井正幸厚生労働委員長の解任決議案を提出。趣旨説明で3時間、賛成討論で民主党2時間、共産党2時間と、7時間も議論に時間をかけ、その後、牛歩戦術に出て投票に1時間半もかけてきたが、与党側の反対多数で否決。
さらに野党は倉田参議院議長の不信任案決議案を提出し、その審議に入る前に議長職を代行した本岡副議長が「本日はこれにて散会します」と一方的に宣言。われわれの抗議の声にも耳を貸さずに副議長と野党議員がいっせいに本会議場から退出し、議場は大混乱となった。われわれ与党議員はそのまま議席に待機していたが、やがて倉田議長が野党議員のピケを乗り越えて本会議場に入場し、「ただいまの副議長の散会宣言は参議院規則違反であるので無効。これから自分の不信任決議案が議題となるので自分は議事進行できない。そこで仮議長を選挙します。」と宣言。一旦休憩の後、仮議長に竹山参議院議員を選出し、議長不信任案を反対多数で否決。副議長の散会宣言を認める立場上、議場に戻ってこれない民主党を尻目に、野党が提出した川村参議院事務総長不信任案、坂口厚生労働大臣問責決議案等を次々と否決し、最後に年金改革法を可決した。
副議長による散会宣言が民主党の秘策であったそうだが、議会運営の常識から言ってまったく無意味な秘策であった。そして秘策といいながらその数時間前には私を含め多くの自民党議員やマスコミの知るところとなっていたのもお粗末であった。
さらに今回の年金改革法案成立の過程で看過できないのは、委員会や本会議の採決の過程で民主党の一部若手衆議院議員が参議院に乱入し審議や採決の妨害を行ったことである。委員会の採決では国井厚生労働委員長の机の上に上って暴れた衆議院議員がいたし、5日未明の本会議では本岡副議長の散会宣言の無効を宣告すべく本会議場入りしようとした倉田議長の進路を10名程度の民主党衆議院議員が阻んだのである。これは憲法が規定する2院制を踏みにじる暴挙としか言いようがない。私は参加した議員たちに厳正な処分を求めているところである。
いずれにせよ国民が重大な関心を持つ年金法案がこのような形で可決されることになったのは非常に残念である。自民党としても反省すべきは反省したい。そもそも年金とは党派の争いや選挙の道具にすべきものではない。政権が交代したからといって年金の在り方が変わっていたのでは国民は安心できない。年金については党派を超えて長く続ける事のできる仕組みを模索すべきである。自民、公明、民主の3党は年金の一元化を含む抜本改革で合意している。この合意が速やかに実行に移されることこそが重要である。